医院名:くらかわ整形外科・耳鼻咽喉科 
住所:〒662-0084 兵庫県西宮市樋之池町10-15 
紀乃国第一ビル101号室
電話番号:0798-70-1010

骨粗鬆症外来

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症とは骨粗鬆症は、骨密度(単位体積あたりの骨量)が減少して骨がもろくなってしまった状態です。原因には女性ホルモンの減少、老化、カルシウム不足、運動不足、ダイエット、偏食、喫煙、飲酒などがあり、特に閉経によって女性ホルモンが減少して起こるケースが多くなっています。ただし、若い世代でも極端なダイエットなどによって骨粗鬆症を発症するケースがあります。
骨粗鬆症になると骨がもろくなるため骨折しやすくなります。高齢の方の場合、脊椎(背骨)や大腿骨の骨折をきっかけに歩行能力が低下し、介護が必要になってしまうケースが多く、健康寿命を縮める要因として問題視されています。
骨量はほとんどの場合、20歳~40歳にピークを迎えて加齢とともに減少していきますが、骨粗鬆症と診断されてからでも適切な治療や食習慣の改善、運動習慣の定着によって骨折リスクを軽減することができます。

骨粗鬆症における大きなリスク

骨密度が減少すると、比較的軽い転倒で骨折しやすくなり、骨折リスクが高くなります。また、転倒していないのに背骨に骨折を生じる、腰痛で生活力が低下する”いつのまにか骨折”も問題になっています。骨がもろくなるため、身体の重みを支えられなくなって骨がつぶれてしまうことも珍しくありません。背中や腰が曲がってしまう、痛みが起こる、変形して圧迫骨折を起こす、身体を支えられなくなって歩行が困難になるなど骨粗鬆症は健康寿命を大きく縮めてしまいます。
骨粗鬆症は整形外科で専門的な検査と治療が受けられます。介護が必要になるリスクを最小にするためには、定期的な健診と予防の取り組み、早めの治療が重要です。

女性は40歳から、男性は60歳からの検診が重要です

女性は40歳から、男性は60歳からの検診が重要です骨は骨吸収と骨形成という新陳代謝を繰り返しています。女性ホルモンのエストロゲンは骨吸収をゆるやかにして骨からカルシウムが溶けだすのを抑制する働きを持っています。そのため、エストロゲン分泌量が低下する更年期以降、女性は骨吸収のスピードが速まってしまい、骨形成が追い付かなくなって骨粗鬆症を発症しやすくなります。閉経を迎える数年前から骨量が急激に減少しはじめるため、女性は45歳を過ぎたら、毎年骨粗鬆症の検査を受けることをお勧めしています。

骨の代謝作用 リモデリングとは

骨は破骨細胞が骨を壊して吸収し、その吸収された部分に骨芽細胞が新しい骨を作るという代謝作用を行っています。この代謝作用はリモデリングと呼ばれています。このリモデリングには、骨の主成分であるカルシウムやタンパク質だけでなく、骨の代謝を支える鉄・ビタミンB群・ビタミンDなどの栄養素も不可欠です。

WHO(世界保健機関)の骨折リスク評価

WHO(世界保健機関)では、40歳以上の人を対象にした「骨折リスク評価法 ”FRAX”(fracture risk assessment tool)」をホームページ上で公開しています。これは質問に答えることで今後10年間に骨粗鬆症を原因とする骨折が起こるリスクを自動的に算出して評価するもので、当院でもこのFRAXを用いて治療方針の参考にすることがあります。臨床上の危険因子と大腿骨頸部の骨密度(BMD)を組み合わせてリスクを計算しており、体重や身長を入力することでBMIからも結果を得ることができます。このFRAXで15%以上という結果が出た場合には骨折リスクが高いとされるため、速やかに治療の開始が必要です。

FRAXの質問項目

  • 年齢・性別・体重・身長
  • 骨折歴・両親の大腿骨近位部骨折歴
  • 現在の喫煙の有無
  • 現在のステロイド服用、あるいは過去3ヶ月以上にわたる服用の有無
  • 関節リウマチの有無
  • 骨粗鬆症につながる疾患の有無(1型糖尿病、甲状腺機能亢進症、45歳未満の早期閉経など)
  • ビール換算で毎日コップ3杯以上のアルコール摂取があるかどうか
  • 大腿骨頸部の骨密度(またはBMI)

当院で実施する骨粗鬆症の検査

「骨と筋肉を蓄える事で、介護の要らない自分らしい生活を」

 

問診で、骨粗鬆症を引き起こしやすい病気や薬の服用の有無、カルシウム摂取などの食事・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣、ご家族の骨粗鬆症や骨折の有無などをうかがいます。その上で、骨密度検査、骨代謝マーカー検査、X線検査、身長測定などを行って診断となります。ただし、骨折によって、歩行能力が低下し、介護が必要となるリスクを減らすには、骨の評価だけでは充分ではなく、四肢(しし:両手・両足)の筋量を測定し、筋肉と骨をバランスよく維持していく事が重要です。

骨密度検査

骨密度検査骨の強さを判定する検査です。当院では、全身型の骨密度測定装置による骨密度測定『DXA法』を行っています。DXA法は測定部位に2種類のX線を照射する二重エネルギーX線吸収測定法で、透過度を解析して骨量を測定します。短時間(約5分間)で行うことができ、誤差が少なく、微量のX線による安全性の高い検査であり、骨量測定の標準的な検査法となっています。

当院が採用する機器では腰椎(腰の骨)と大腿骨近位部(太ももの付け根部分の骨)の2箇所の骨を検査しています。腰椎圧迫骨折(年間新規患者数30万人~1000万人)と大腿骨近位部骨折(骨折手術件数が年間30万人)は、いずれも受傷すると歩行能力、体力の低下を招き、介護が必要になる可能性が高い骨折です。そのため、当院では折れると寝たきりリスクのある部位の骨密度を直接測定し、予防と治療に役立てています。

骨代謝マーカー検査

血液や尿を採取して、骨の新陳代謝で産生される物質である骨形成マーカーや骨吸収マーカーを測定して骨の代謝状態を調べます。治療の効果を確かめるためにも使われます。骨吸収と骨形成のバランスが崩れている場合、または骨吸収マーカーの数値が高い場合、骨折リスクが高いと判断されます。

X線検査

X線検査主に胸椎や腰椎の骨折や変形、骨がスカスカになった骨粗鬆化の有無を調べます。また、他の疾患の有無や骨粗鬆症との鑑別にも不可欠です。

身長測定

身長測定身長が縮んでいる場合、骨折リスクが高いと言えます。身長測定では25歳時点の身長と比べて4cm以上低くなっている場合、骨折リスクが2倍以上高くなるとされています。

骨粗鬆症の予防と治療

骨粗鬆症は食事や運動の生活習慣も発症に大きく関与するため、骨の生活習慣病と呼ばれることがあります。骨粗鬆症の予防や改善には、食習慣の改善と運動習慣の定着が大きく役立ちます。当院では、患者さん一人ひとりの不足している栄養素を解析し、治療に役立てています。また、運動の習慣が定着するまで、専門家が一緒になって取り組むプログラムをご用意しています。

食事療法

食事療法骨を強くするためにはカルシウムやタンパク質が必要ですが、リモデリングという骨の代謝には鉄・ビタミンB群・ビタミンDなども欠かせません。

カルシウム 食品として700~800mg/日
ビタミンD 400~800IU/日
ビタミンK 250~300μg/日

バランスの良い食生活の中で、上記の栄養素をしっかりとるようにしてください。またカルシウムの吸収を妨げる・カルシウムの排泄量を増やす食品をとり過ぎないようにすることも心がける必要があります。

積極的にとる栄養素と、それが含まれる食品

カルシウム
乳製品はカルシウムの含有量が多く、カルシウムの吸収を促進する成分も含まれているため、効率よくカルシウムを摂取できます。
魚介類では、干しえびやしらす干しなど丸ごと食べられるものがカルシウム含有量が多くなっています。わかさきやいわし、ししゃもなどもおすすめできます。骨までやわらかい鮭の缶詰もカルシウムをとりやすい食品です。
野菜類では、大根の葉、ケール、水菜はカルシウムが多く、比較的量をとりやすい食品です。

タンパク質
肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などに多く含まれています。

ビタミンD
あんこうの肝、しらす干し、いわしの丸干し、いくらや筋子、鮭などに多く含まれています。また、魚介類以外では、きくらげや干し椎茸にも多く含まれています。

ビタミンK
ビタミンK1とビタミンK2があり、ビタミンK1は植物の葉緑体に含まれる栄養素ですから、緑の濃い野菜に多く含まれています。代表的なものに、パセリや春菊、モロヘイヤ、岩のり、わかめ、抹茶などがあります。ビタミンK2は納豆がおすすめできます。

とり過ぎないよう心がける食品

カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりする、アルコールやカフェイン、そしてリンが多く含まれた食品のとり過ぎに注意してください。リンも骨を作るために不可欠な栄養素ですが、不足することはほとんどなく、過剰摂取するとカルシウムの吸収を妨げるとされています。リンは食品添加物として使われていることが多いため、清涼飲料水やスナック菓子、インスタント食品などをとり過ぎないようにしてください。

運動療法

運動療法骨は体重をかけるなどの負荷によって強化されます。散歩やウォーキングのような軽い運動でも骨量を増やす効果が十分に見込めます。重要なのは運動を習慣化して続けることです。
また運動で筋肉が強化されるとバランス感覚が向上して身体をしっかり支えられるようになり、転倒しにくくなります。バランス感覚の改善も骨折リスクを下げることにつながります。無理のない範囲で軽い運動を続けましょう。

薬物療法

骨粗鬆症と診断されたら、骨折リスクを下げるために薬物療法が必要になります。患者さんの年齢や性別、症状や骨密度など、状態によって治療法は変わってきます。薬物療法で使う薬剤は大きく分けて、骨の破壊を抑制するもの、骨の材料を補うもの、骨形成を促進するものがあります。

骨の破壊を抑制する薬

ビスフォスフォネート製剤
骨吸収を抑制して骨形成を促進し、骨密度を増やすために使われます。この薬剤は腸で吸収されると骨にそのまま届いて破骨細胞の過剰な骨吸収を抑制します。

選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)
骨に対して女性ホルモンのエストロゲンに似た作用を起こす薬剤です。骨吸収を抑制して骨量を増加させるだけでなく、骨質改善効果も期待できるのではと注目されています。

ヒト型抗RANKL抗体製剤(デノスマブ)
骨を壊す破骨細胞をできにくくすることで骨の破壊を抑制し、骨量を増やして骨折リスクを減少させる薬です。6ヶ月に1度の皮下注射ですから、内服が苦手な方にも向いています。

骨の材料を補う薬

活性型ビタミンD3製剤
腸管からのカルシウムの吸収を促進して体内のカルシウム量を増やします。また、骨形成の促進も期待できます。

ビタミンK製剤
骨芽細胞に作用して骨形成を促進します。また、骨吸収を抑制して骨代謝のバランスを整え、骨質改善にもつながります。ただし、血液を固まりにくくする薬(ワーファリン)を服用している場合はこの薬を使うことができません。お薬のご相談の際は、お薬手帳をご持参ください。

カルシウム製剤
乳糖不耐症で牛乳が飲めない方、胃腸の手術後など、食事によるカルシウム摂取量が不足してしまう場合に他剤との併用で用います。

骨形成を促進する薬

副甲状腺ホルモン製剤(PTH)
骨密度が大幅に低下しているなど、骨折リスクが高い状況で用いられます。骨形成を促進して骨量を増やすことで、骨折リスク低下につなげます。専用キットで1日1回自己注射する治療法と、週1回医療機関を受診して注射を受ける治療法があります。

ヒト化抗スクレロスチン抗体製剤(ロモソズマブ)
骨内部で骨芽細胞による骨形成を抑制し、破骨細胞による骨吸収を刺激しているスクレロスチンに結合して無効化する事により、従来の薬品以上に骨吸収を抑制し、骨形成を促進する作用が報告されています。月に1回医療機関で皮下注射する治療です。